そして勝手に踊りだす

くだまき100年、心は在宅 身体は現場 オタク元気で留守がいい。3度のごはんとコスメが好き/エンタメ中心よろずサークル/デザイン・占いもたまに

#極力日記 55

家族が減った、所謂絶縁というヤツである。

 

そもそも長らく家族という形は成していなかったが、父の17回忌を目前に『自分は死んだものと思ってほしい』との兄からの連絡が母のもとに届いたのであった。

『これ以上関わろうとするならば、住居も職場も変える』と、斜め上に気合いの入ったメッセージ。

こう言われてしまっては、彼に関わることなど到底できない。ここで『事情を教えてくれ』と食い下がると本当に消息が分からなくなる存在であること。それは重々理解している。我々には取りつく島もなく、非常に消極的な理由で話し合いを放棄した。

そう言い捨てることで彼が何がしかの安息を得るのならば、受け入れるしかないのである(とても幼い逃避行動だと思うが)。

 

母には、なにもできなくてごめん、と何の足しにもならない言葉を振り絞ることしかできなかった。こんなにもベラベラと文字を書き連ねているくせに、とんだ体たらくである。情けない。

 

…とまぁ、兄とは極めて歪な関係であるが、決定的な事の発端は彼が高校生だった頃、母がノイローゼになりそうなほど追い詰められていた時期にある。

遺恨がそのまま彼のなかで今も煮え続けているようで、きっとそうでもしないと過去のものにならないのだろう。

 

ろくに顔も見ていない人間のことなので、こちらもまるで他人として語るしかないのだが

きっとこちらが親族として当たり前の振る舞いを彼に求めるたび、彼にとって到底許し難いことを思い出して辛かったのだろうと思う。

 

わたし自身、(幼少期から人格面で難があったものの、学問においては非常に優秀だった)彼が明確に道を踏み外したのは全寮制の高校に進学したときだと思っている。

最初は高校デビューかな、くらいに思っていたが、しばらくしてそういう可愛らしいものではないらしい、というのは何となく感じ取っていた。

…が、受験を控えた子供にとても聞かせられるような荒れ方ではなかったらしく、結局いまも断片的にしか事情を知らない…し、おそらく親たちも彼が結局のところ何にそこまで深く傷つけられたのかは知らないと思う。

兄は歩み寄る、耳を傾ける、内省するということを知らないし、父は正論で責め立て逃げ道のひとつも用意してやれなかった。母はなんとか取り持とうとしたものの、いよいよ息子からの恨みを買うばかりであった。そして蚊帳の外のわたし。

 

兄が父の首に手をかける、という地獄の話を聞くたび、わたしの耳に一切入れまいとした母の判断は正しかったと思うが、しかし、あきらかに家庭の様子がおかしいのに何も知らされないことを気持ち悪くも思っていた。彼女なりの配慮であったのは痛いほど理解しているが。

 

その数年後に病で父が亡くなり(前述のようなことを思うと、よく彼は救急車を呼んでくれたと思う)、彼にも子どもが産まれ父になり、結婚もし、定職にも就き、離婚もしたが、数年前の法事の席で『もっと勉強しておけばよかった』と溢したりし、彼なりに思うところがあったのか、と時の偉大さを感じたりもしたのだが、それは思い過ごしであったらしい。

 

…というか、彼との限定的な付き合いのなかで

ヤツは一瞬の盛り上がりでやたら感傷的な言葉を溢すが、基本的には自分さえ良ければ他人のことは心底どうでもいいし見下している非常に攻撃的な人間だ、と知っているはずであった。ほだされている場合ではなかった。

 

と、まぁ、ショッキングではあるが想定内の出来事であった。

あまり気持ちの整理はついていないし、考えることが増えたし、動揺してはいるものの、わたしの根っこを見つめる機会を得たように思う。

 

どうにもわたしは兄と親の関係性を側から見ていたからか人間に絶望しているところがあって、家族とかそういうものを信じられないし、興味が持てないんだと思う。

そもそも子どもに限らず動物などエキセントリックな行動を取る生き物が苦手なこともあるが、結婚して家庭を築きたい、子どもがほしい、なんてこと、到底無邪気に思えない。きっと幸せなことのひとつなんだろうけども、こと子どもにおいては『向いてなかった、やめます』が叶わないのだ。

 

わたしはおそらく、まともな家庭を知らない。

まともな親子を知らない。まともな人間だと思わない。まともに人間を育てる素養がないのではないか、と思っている。

 

病んでるとか、生き急いでるとか、もっと肩の力を抜けとか、いろいろ言う人はいるし、

その人なりに想ってくれての言葉だとは思うけれど…そのありがたさは身に沁みるけれど、それで前を向けるような傷ならば、もっと早くに前を向けたと思っている。ごめんなさい。

 

わたしは自分のことを人に恵まれていると思っているし、自分のことをかわいそうと思ったり、不幸だなんて思ったことはただの一度もない。

 

ただ、やはりわたしにこの世は向かない。

1日でもはやく、わたしは死にたい。